実測(モーションキャプチャー) と作成したモデルの比較

実測(モーションキャプチャー) と作成したモデルの比較

片足立ちとは、片足を空中に浮かせる姿勢のことです。片足を浮かせることによりバランスが不安定となり、バランスを崩さないように筋肉が働きます。

AnyBodyの中には筋骨格をモデル化したMannequinが導入されており、人間がおこなう動作をMannequinに模倣させて、人体にかかる負担を解析することができます。

模倣させる方法は二種類あります。ひとつは複数のカメラを使用して動作を撮るモーションキャプチャデータを使用する場合、もうひとつはドライバーにより、動作をユーザーが直接規定する場合です。

モーションキャプチャを使ったモデルでは簡単に現実の動作を解析することができますが、毎回、大がかりな測定システムを用意する必要が有、また測定した結果は、特定被験者の、その時の固有動作ですので、結果データは活用方法があまり有りません。
一方、ドライバーを使ったモデルは動作をすべてパラメータで設定しますので、それぞれの目的に合わせたパラメータスタディをおこなうことができます(例:人体への負担を小さくする条件)。もちろん、ドライバーを適切に設定したモデルの解析結果はモーションキャプチャを使ったモデルの解析結果と同じになります。ただし、歩行/走行などの複雑な動作はドライバーで設定することが困難です。しかし、ある種の動作はドライバーだけで作成でき、パラメータスタディにつなげることが可能です。

この例では、モーションキャプチャーを使わずにドライバーだけで作成したモデルの解析結果とモーションキャプチャーを元にしたモデルの解析結果を比較し、ドライバーだけで作成したモデルをパラメータスタディにつなげた事を紹介します。

 

 

① モデル作成

 

■ モーションキャプチャーでのモデル作成

モーションキャプチャーで動作を撮ります。複数台のカメラに囲まれた状態で解析したい動作を行います。この時に反力計を使えば動作と同時に床反力のデータも保存されます。撮った動作や床反力はC3D形式を介してAnyBodyに取り込みます。AnyBodyはMannequinが取り込まれた動作を模倣できるように最適な骨の長さと関節の角度を計算し、その後に逆動力学解析をします。

【床反力測定器がない場合】
動作を撮る際に、反力計による実測データ取得が望ましいですが、床反力のデータがなくともAnyBodyの床反力を推定する機能を用いて床反力を考慮することが可能です。下にその機能と実測を比較しました。同じ動作を取り込み、左のデータは反力計で得られた床反力を、右のデータは反力計のデータを除いてこの機能を用いています。

 

 

 

動画1 CoPの様子
左:実測のCoP 右:推定されたCoP
CoPとはCenter of Pressureのこと

 

 

■ ドライバーでのモデル作成

片足立ちになるように初期の関節角をモデルに設定します。自分が行った動作になるようにモデルに設定します。今回は重心を動かさずに右脚の付け根から倒れるよう設定しました。このモデルに前述の床反力推定機能を用いることが可能です。床反力推定機能を用いることで床反力を計算し、パラメータスタディの結果に床反力の変化(大きさやCOPの位置など)を反映させることも可能です。

 

データ:
軸足・・・右
倒れる角度・・・初期角度から40度程度
倒れる速さ・・・毎秒20度程度
重力・・・9.81 m/s2

 

動画2 動作と床反力の比較
左:モーションキャプチャーを用いた
モデル
右:ドライバーで作成したモデル

 

 

② 結果の比較

 

結果は以下の通りです。数値はドライバーを使ったモデルが少々高く出ていますが、動作に対して体への負担が変化する様子はドライバーを使っても確認することが可能です。

 

 

 

 

 

 

③ パラメータスタディ

 

■ スタディの概要

モデルの重心の位置をパラメータとして解析しました。
パラメータスタディによって筋肉の負荷が小さくなる条件を見つけます。

データ:
座標の原点・・・軸足(右足)のかかと
重心の位置(前後方向)・・・原点から前方向へ6, 8, 10, 12, 14 cmの5種類
重心の位置(左右方向)・・・原点から右方向へ-10, -5, 0, 5, 10 cmの5種類

■ 結果

右脚(軸足)にかかる負担は重心がかかとの上から離れるほど大きくなることがわかります。

 

 

④ まとめ

 

■ モーションキャプチャーでのモデル作成の利点

1. 実際の動作をもとにしているので、力学的解析は、信頼した結果が得られます。

■ ドライバーでのモデル作成の利果

1. 実動作を模した妥当な動作規定を行なえば、実測に近い結果が得られます。
2. 実際の測定を行なうことなく、解析モデルのパラメータスタディにより課題解決が行なえます。

 

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