OpenFOAMの粘性モデル

OpenFOAMの粘性モデル

OpenFOAMの粘性モデル

 ※OpenFOAM:世界中の有志によって開発されたオープンソースCFD(数値流体力学)ソフトウェア。オープンソースLinux同様、GNU General Public Licenseに準拠したフリーソフトで、ユーザーはOpenFOAM財団から無料ダウンロードして使用・改変・商利用できる。ドキュメントは未整備。





 水や空気は、せん断応力がせん断速度に比例する特徴を持っています。このような流体をニュートン流体と呼びます。この時の比例係数が粘性で、流体固有の物性値です。
 これを式で表すと(1)式になります。



いっぽう、血液、粘土、生クリームなどの非ニュートン流では、式(1)の比例関係は成り立ちません。例えば、血液の粘性はせん断速度に比例せず、せん断速度が大きいほど粘性は小さくなります。

OpenFOAMには、ニュートン流体に加えて非ニュートン流体用の粘性モデルが多数用意されています。各モデルの式で実験データをフィッティングし、粘性のカーブを再現するパラメータを入力することで非ニュートン流体の粘性モデルを表現することができます。

以下にOpenFOAMに用意されている粘性モデルの一部を紹介します。
・べき乗則モデル
 粘性とせん断速度の関係は(2)式となります。



nが1より小さい場合は、せん断速度が大きくなると粘性が小さくなる擬塑性流体の特性を示します。

・Bird-Carreauモデル
 粘性とせん断速度の関係は(3)式となります。



べき乗則モデルにおいて、nが1より小さい場合にせん断速度をゼロに近づけると、粘性が無限大になります。一方、せん断速度を無限大に近づけると粘性はゼロになります。これを避けるために、べき乗則モデルでは上限値と下限値を設定します。この上限値と下限値になめらかに漸近させたモデルがBird-Carreauモデルです(図1)。べき乗則モデルと同じく、血液や塗料などの擬塑性流体の流れを再現する際に使用され、特に、低せん断、高せん断における流動を正確に表現したい場合に使用されます。



・Herschel-Bulkleyモデル
 粘性とせん断速度の関係は(4)式となります。



一定のせん断応力に達するまでは流動しない特徴を持つビンガム塑性モデル(右辺第1項目)とべき乗則モデル(右辺第2項目)を組み合わせたモデルで、バターや生クリームなどのビンガム流体が表現できます。施工時のコンクリートの流動を再現する際にもHerschel-Bulkleyモデルが使用されます。

OpenFOAMはソースコードが公開されているため、例えば以下のような粘性モデルを組み込んで使用することができます。

・時間依存の粘性モデル
 実験などから時間と粘性の対応表を作成しておいて、各時刻における粘性を対応表から参照するモデル。データがない時刻の粘性は、前後のデータから補間して計算します。
・任意の物理量に依存した粘性モデル
 温度や流速などの他の物理量を変数とする粘性の式を作成し、計算に使用するモデル。



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