樹脂成形と レオロジー 第 3 回 「 樹脂の成形法 」
人類が得た最初のモノづくり法は、石包丁や石矢じりなど大きな塊から不要部を取り去って目的形状を残す「除去加工」です。切削、レーザー、エッチング加工がこれに該当します。一方、樹脂の成形加工法はあらかじめ計量された材料を目的形状に成形する「変形加工」となります。ここではその代表的な成形法について説明します。
1.熱可塑性樹脂の成形法
1-1. 射出成形(Injection Molding)
高熱のシリンダーによって溶かされた樹脂を金型に流し込み、一定時間冷却することで樹脂が固められ成形品が出来上がります。私たちが日常目にする製品の約9割がこの方法で作られています。型締め⇒射出⇒保圧⇒冷却⇒型開き⇒製品取り出しという動作が全自動で迅速に行われます。樹脂が金型に流し込まれる様子が注射器の作用に似ている事から射出成形法(Injection Molding)とよばれています。
1-2.押出成形(Extrusion Molding)
高熱のシリンダーによって溶かされた樹脂を金型に流し込み、解放された出口から同じ断面形状の樹脂を連続的に押し出す方法です。出てきた樹脂はサイジングという治具で所定の寸法に整えられた後、水槽で冷却されて樹脂が固められ、巻取りや切断工程を経て製品になります。パイプ、棒、雨樋、シート、フィルム、被覆電線などがこの方法で作られています。被覆電線のような場合は電線供給部が別途設けられ、金型から出たときに自動的に樹脂で被覆される方式になっています。
1-3. ブロー成形(Blow Molding)
中空の製品を成形する代表的な方法です。まず、樹脂をブロー成形機で溶かして、ダイスヘッドと呼ばれる出口からパイプ状の樹脂を押し出します。この形状の樹脂をパリソンとよびます。パリソンを金型で挟み込み、中に空気を吹き込みます。これにより樹脂は金型壁に押し付けられ、所定の容器の形になります。冷却後金型から取り出されて製品となります。下図のような方式がダイレクトブロー成形とよばれます。寸法精度が要求されるような場合は、プリフォームという底の付いた半製品を金型に入れ、ロッドで押しながら空気を吹き込む延伸ブロー成形という方法を用います。ボトル類や自動車の燃料タンクを始めとして、中空形状の製品の多くはこの方法を用いて作られています。
1-4.熱成形(Thermo-Forming)
予備成形された樹脂シートをヒーターによりやわらかくなるまで加熱し上下金型の間に置きます。シートと金型の間の空気を抜き真空状態にすると、大気圧がシートを金型に密着させます。これに片方の金型を押しつけると所定の形状の製品ができます。この成形法により、冷蔵庫の内張り、スーパーの食品用トレイ、卵パック、冷凍カップ、おもちゃのお面などが作られています。
2.熱硬化性樹脂の成形法
2-1. 圧縮成形(Compression Molding)
この成形法はタイ焼きと同じ原理で、金型の中に樹脂を入れ加熱・加圧します。樹脂は加熱により硬化反応が進行し、ゲル化により固化して製品となります。金型製作費が安価で大型製品が作りやすいという特長があります。また、射出成形のように途中で細い流路を通過させる必要がないので、長繊維質の充填剤入り製品を配向性が少ない状態で安定して成形できます。樹脂をガラス繊維に含侵させて各種処理により取扱い性を良好にしたシートはSMC(Sheet molding compound)とよばれ、このシートを用いて圧縮成形を行う方法をSMC成形といいます。この成形法で浴槽、ユニットバス、水タンク、各種自動車部品などが作られています。
2-2. 移送成形(Transfer Molding)
加熱軟化させた樹脂をポット内に投入し、狭い通り道(ランナー・ゲートなど)から加熱されたキャビティの中に押し込んで硬化させる方法です。射出成形とよく似ていますが、移送成形ではポットの中に1回分だけの材料が投入されます。製品の形状や使用されるインサートの種類により、圧縮成形には不向きな製品を成形する際に利用されます。より精密な寸法精度が求められる成形品や、コイルやモータの封止に適した成形方法です。また、半導体などの電子部品を封止する際にも用いられます。なお、半導体部品については小型化に伴う構造の変化が進み、多数の部品を一括して圧縮成形する方法も行われています。
2-3. 反応射出成形(Reaction Injection Molding)
化学活性を有する低分子・低粘度の二種類以上の液成分を所定の比率に計量し、ミキシングヘッドで衝突混合させ、密閉された金型内に注入する成形法です。この混合液は急激に化学反応が進み、ゲル化して固体となり製品ができます。もっとも多く用いられる樹脂はポリウレタンです。この材料は断熱や遮音などの目的で発泡構造にする用途が多く、このプロセスでの化学反応で発泡ポリウレタンにできます。自動車のシート、インパネや冷蔵庫の断熱部がこの成形法で作られています。
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