樹脂成形とレオロジー 第13回
「 熱硬化性樹脂成形と物性値の変化」

樹脂成形とレオロジー 第13回<br>「 熱硬化性樹脂成形と物性値の変化」

樹脂成形とレオロジー 第13回「 熱硬化性樹脂成形と物性値の変化」

 樹脂は熱可塑性と熱硬化性に大別でき、それぞれの種類、用途や成形法の概略について本講座の第二回と第三回で説明してきました。ここから数回は熱硬化性樹脂についてCAEでの取り扱い方について述べていきたいと思います。





熱硬化性樹脂を加熱するとどうなるか

 図1に熱硬化性樹脂の構造の変化の概略を示します。丸一つが樹脂の分子を表します。それぞれの分子は周りの分子と結合するための電子(腕)を持っています。加熱前はそれぞれの分子は独立しています。樹脂を加熱すると化学反応が促進され、隣同士の分子の腕の結合が始まります。加熱を継続すると、分子と腕は3次元網目構造となり、加熱前に比べて分子間が強固に繋がった固体の状態になります。熱可塑性樹脂では加熱すると溶融するだけですが、熱硬化性樹脂では加熱により不溶の生成物ができることが大きな違いになります。



成形中に物性値がどのように変化するか

 実際の成形では、樹脂は外部から熱を加えられ、温度上昇しながら物性が変化していきます。ここでは現象を簡略化するために一定温度での成形プロセスという前提で物性値の変化を説明します。これを図2に示します。横軸は時間で縦軸は各種物性値です。



 まず粘度ですが、最初は分子間の結合がまだ始まっていませんので、単独分子は自由に動けます。したがって粘度はその温度に応じたもっとも低い値を示します。時間の経過とともに分子間の結合が進み、分子が動きにくくなると粘度が指数関数的に増大し、ゲル化点で液体から固体へと変化します。通常、粘度が低く成形機への負荷が小さい状態で金型内への充填を行います。

 固体に変わっても反応の進行は継続し、分子構造の変化により弾性率は増大し、比容積は減少します。成形では所定の弾性率に達してから金型から製品を取り出します。厳密にはこれらの物性値は液体状態でも変化しますのでこの領域は破線で示してあります。

 上のような物性値の変化が起きるのは分子間の結合状況が変わるためです。時間の経過とともに結合量が増え、分子量が増大していきます。ここで、結合なしを0、完全結合を1とした無次元数で表したものが反応率になります。ゲル化時間での反応率をゲル化反応率とよびます。

 このように、熱硬化性樹脂では物性値の変化は反応の進行と密接に結び付けられます。したがって、熱硬化性樹脂のCAEでは、反応状態を予測できるモデルを使用し、粘度や弾性率などの変化と結び付ける計算方式を構築する事が重要になります。



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