Mat. Curve Modeller:遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール – 4

Mat. Curve Modeller:遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール – 4

Mat. Curve Modeller:
遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール - 4     

最適化ツールの機能の向上と相まって、非線形材料データの作成方法、検証方法は多くの研究者、企業からの提案があり、商品化もされています。弊社でも、独自の視点を形にした材料データ作成ソフトMat. Curve Modellerを2021年11月にリリースしました。以下に、開発者によるコラムをお届けします。

今回から4回にわたってMat. Curve Modeller のMises⇔SAMP変換機能に焦点をあてて解説します。まず初めに、この回ではMises⇔SAMP変換機能の使い道を紹介します。

樹脂材料データと構成則

 樹脂材料の1つであるポリカーボネート材の引張試験結果(真応力-真ひずみ関係)を図1に示します。応力は原点から緩やかに増加し、ひずみ5%あたりで急に低下します。その後、応力はゆるやかに上昇し、破断前に応力増加の度合いが上がっています。また、ポリカーボネート材などの延性材料は、図2に示すようなネッキング変形(永久変形)を伴います。このため、従来から、CAEで樹脂材料をモデル化する際は弾塑性材料構成則(Mises構成則)が用いられ、硬化関数として任意のカーブデータを入力できる材料モデルが頻回に用いられます。例えば、Ansys LS-DYNA なら MAT_024、Altair Radioss なら LAW036、などです。

圧縮変形、せん断変形など

 樹脂材料に限らず、部材は様々な荷重を受けて変形します。変形には、上に示した引張変形以外に圧縮変形、せん断変形、二軸引張変形などが知られています。ポリカーボネート材の圧縮試験結果(真応力-真ひずみ関係)を図3に示します。図1と比較すると、カーブ形状はまったく異なっています。上で説明したMises構成則の場合、引張と圧縮は同じ結果となりますので、引張試験結果を使って樹脂材料をモデル化すると、図3を再現できないことになります。この対策として、引張と圧縮を別々に扱う弾塑性材料モデルを用いることが考えられます。例えば、Ansys LS-DYNA では、MAT_124 です。ただし、MAT_024 や MAT_124 は二軸引張変形(面衝撃試験など)は硬めに応答しますので注意が必要です。

膨張挙動、クレイズ、破壊

 樹脂材料は引張変形において、内部のボイドが拡大し、ボイド同士が結合して破壊にいたると言われています。例えば、スーパーのビニール袋を伸ばしたり、プラモデルのランナ―を曲げたりすると、引張変形側が白く濁るような変化が見られます。この白く濁るような変化にはボイドの拡大・結合が関係していると言われていて、この変化を塑性変形における膨張挙動としてモデル化する方法が提案されています。このモデル化方法を用いて破壊挙動を模擬しようという提案も出ています。

樹脂材料構成則 SAMP、Mat. Curve Modeller の変換機能

 Mat. Curve Modeller で扱う樹脂材料用構成則 SAMP (Ansys LS-DYNAのMAT_187、Altair Radioss の LAW076)は上に挙げた樹脂材料の特徴をすべて考慮可能な弾塑性材料モデルですが、材料データの準備の難易度が高いです。その理由の一つは膨張挙動の考慮です。膨張挙動の考慮によって、真応力の導出が難しくなります。以降の回では、この点を解説してゆきます。

 今回のテーマである「Mat. Curve Modeller のMises ⇔ SAMP 変換機能」によって「膨張挙動の考慮」と「硬化関数の同定」を分離することができ、SAMP用材料データを確実に作成できるようになります。先に、「従来から、CAEで樹脂材料をモデル化する際は弾塑性材料構成則(Mises構成則)が用いられ、 云々」と説明しましたが、 Mises ⇔ SAMP 変換機能によって、これまでに作成されてきたMises構成則用材料データをSAMP用データに作り替えることが可能となります。

Mises⇔SAMP変換機能の理論:真応力の評価式

 次回は、Mises⇔SAMP変換機能を理解するための真応力の評価式を解説します。




関連ページ/参考文献


竹越、丹羽、” MAT_SAMP-1樹脂材料データ作成技術の紹介”、LS-DYNA & JSTAMP Forum 2013 JSOL

竹越、”塑性体積膨張を示す樹脂の材料データ作成手法の検討”、第57回日本学術会議材料工学連合講演会  日本材料学会

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