はじめに
クリーンルームでは、細菌の拡散などを防ぐために周囲の部屋との圧力差を一定に保つことが重要です。簡単のため、以下の2部屋のモデルについて、目標の圧力差となる吸気量(qin)を1DCAE解析により求めた事例を紹介します。

基礎式
理想気体の状態方程式を時間微分します。(1)式に示します。

ここで、各変数は以下を示します。

右辺の室内空気量の変化量は(2)式で表されます。

漏れ流量は(3)式となります。
![]()
ここで、各変数は以下を示します。

また、ドアの開閉を考慮します。ドアの開閉は次式でモデル化します。
![]()
ここで、state関数は以下を示します。

以上のことから、(5)の室圧と風量の関係式が得られます。この(5)式について1DCAEのモデルを構築し、解析を行います。

解析モデル作成
まず、基礎式を解くブロック線図モデルを作成します。ソフトウェアはAltair Twin Activateを使用しました。

rooms内

room1,room2内

計算結果1
表に示す入力パラメータを使用し、計算を行った結果を示します。
| qin[m³/h] | 80 |
| qout1[m³/h] | 10 |
| qout2[m³/h] | 40 |
| R[N m/(kg K)]] | 287 |
| T[K] | 273.15+20 |
| rho[kg/m³] | 1.2 |
| Vrm[m³] | 60 |
| ELA[m²] | 0.002 |
| alpha[-] | 0.05 |
圧力差は、以下に示す結果となりました。

| 閉鎖時圧力差[Pa] | 17.7 |
| 開放時圧力差[Pa] | 16.7 |
制御システムの追加
続いて、PID制御を追加し、目的の圧力差となる吸気量を求めます。

計算結果2
表に示す入力パラメータを使用し、計算を行った結果を示します。目標の圧力差(dP_target)を20Paとしました。
| dP_target[Pa] | 20 |
| P | 10 |
| I | 3.5 |
| D | 5 |
| qout1[m³/h] | 10 |
| qout2[m³/h] | 40 |
| R[N m/(kg K)]] | 287 |
| T[K] | 273.15+20 |
| rho[kg/m³] | 1.2 |
| Vrm[m³] | 60 |
| ELA[m²] | 0.002 |
| alpha[-] | 0.05 |
圧力差と給気量qinの結果を以下に示します。

まとめ
- 2部屋の簡易モデルについて1DCAEモデルを構築し、システム全体の挙動を効率的に解析しました。
- PID制御を追加し、目的の圧力差となる給気量を求めることができました。このように、制御系モデルとの連携が容易に可能です。
- 3次元の熱流体解析と比べ計算が高速で、わずか数秒程度で結果が得られます。このため、要求仕様を素早く検証でき、設計段階での迅速なフィードバックが可能になります。