筋骨格モデルの必要性

筋骨格モデルの必要性

筋骨格モデルの必要性





 人体をモデル化するにあたり、骨格だけで筋肉のない剛体リンクモデルと、骨格と筋肉がそろった筋骨格モデルの違いを考えます。





 歩く、座る、立つなどの身体活動の土台となっているのは、全身の骨とそれらをつなぎ合わせている関節です。目に見える身体活動のほとんどは、関節まわりの骨の回転運動で実現されます。その回転運動を実現しているのが、約400種類あるといわれる骨格筋*です。

 *骨格筋・・・骨格を動かす筋肉。意識して動かすことができるため随意筋とも呼ばれる (⇔内臓筋、不随意筋) 。

 筋肉は収縮することで力(=筋張力)を発揮します。押す、あるいは回転する筋肉というのは存在しません。筋肉の収縮運動が関節まわりの運動に変換されることで人体動作を実現しています。
 以下に、腕の関節運動の例を示します(図3)。


    

 人体内部力を正しく算出するには、筋骨格モデルを用いる必要があります。以下に、体重60kgの人が前屈した姿勢で30kgの荷物を保持する場面を説明します。

 腰椎から荷物までの水平距離を40cmとし、上半身の自重(ここでは体重の半分の30kgとします)が腰椎から20cmの位置にあるとします(図4)。



 この時、荷物と上半身自重による腰椎まわりの発生トルクは、以下の計算式のとおり176.4Nmとなります。

 30*9.8[N]×0.4[m] + 30*9.8[N]×0.2[m] = 176.4[Nm] 

 これとつりあう大きさのトルクを腰まわりの筋肉の収縮力で実現しますが、筋肉はトルク発揮のために腰に巻きついて上半身+荷物を引っ張り上げなければなりません。このとき、腰骨の中心からの巻きつき距離(=モーメントアーム長)が体の厚みの半分程度、仮に6cmとすれば、腰まわりの筋肉には以下の計算式のとおり2940ニュートンの筋張力が発揮されることになります(図5)。

 176.4[Nm]/0.06[m] = 2940N



 この腰まわりの筋肉の収縮力は、同時に腰椎間を圧縮する力として働き、上半身自重+荷物=60kg(588N)と合わせて3528Nになります。実に体重の6倍の力が腰椎間に掛かっている計算です。



 米国・労働安全衛生総合研究所(NIOSH)では、腰椎が損傷することなく耐えられる力を約3400Nと定め、繰り返しの労働作業などで腰椎にかかる力をこれ以下に抑えるよう指導しています。3528Nという値はNIOSHの制限値を超えており、前屈して30Kgの荷物を持ち上げるのはたいへん危険な動作であることが分かります。

 ちなみに、剛体リンクモデルには筋肉がないため筋張力が計算できず、腰部に発生する生体内部力は、少なくとも上半身自重+荷物=60kg、すなわち588Nは掛かっているという事しかわかりません。



関連記事/関連ページ

AnyBody 解析事例ページ