OpenFOAMのチュートリアル紹介

OpenFOAMのチュートリアル紹介

OpenFOAMのチュートリアル紹介

OpenFOAMはライセンスフリーのCFDソフトです。OpenFOAMをインストールするとチュートリアルディレクトリが作成され、ここに参考用の入力ファイル一式が多数用意されています。しかし、計算の実行手順や計算内容を解説した文書はなく、慣れない人には計算を実行して結果を確認するのは一苦労です。OpenFOAMでどのような計算ができるのかを知りたい人のためにチュートリアルの幾つかを解説します。





二輪車周りの気流解析

 代表的な流体解析のチュートリアルとして、二輪車周りの気流解析を紹介します。計算領域は図1に示す二輪車周辺を囲う矩形の領域です。二輪車の進行方向の境界面に流入条件を、下流側の境界面に流出条件を設定し、上下左右は空気の出入りが発生しない壁面(対称境界)に設定して、風洞実験のように床に固定した二輪車に風を当て、二輪車の走行時に生じる空気流れを相対的に計算させるモデルが提供されています。



 出力の例として、図2に流線の結果を示します。流線を表示することで風の流れが可視化できます。二輪車や人体にかかる抗力が計算でき、空気抵抗の少ない二輪車の形状を検討することができます。

 配管内の流れや、翼形状の最適化などの解析も、類似した入力ファイル一式で対応でき、このチュートリアルを参考にして設定ファイルを作成することができます。



ダムブレイク解析

 次に、VOF法を用いた自由表面解析のチュートリアルを紹介します。このチュートリアルは、水と空気などの多相流の解析に用いることができます。

 初期状態として、図3に示すような赤い矩形の領域に水を設定し、解析スタートと同時に水塊が重力によって崩れ落ちる様子を解析します。解析領域の中央下部に障害物が設定してあり、これによって崩壊した水のエネルギーが遮断されて流れの方向が変わり、水は障害物を越えて流れてゆく越波現象が観察できます。



 3次元解析用のチュートリアルもあります。3次元のチュートリアルモデルでは、自由表面近傍のメッシュを細かくするdynamicMesh機能を使っていて、界面の再現性を高め、解析領域全体のメッシュを細かくする方法に比べて計算負荷を抑えています 。

 溶融はんだの濡れあがりやスロッシングの解析なども、類似した入力ファイル一式で解析がおこなえ、このチュートリアルを参考に設定ファイルが作成できます。



ベナール対流

 温度差を考慮した自然対流の解析のチュートリアルもあります。底面が高温、上面が低温で温度差がある矩形領域内の空気の流れを解析します。

 温度が高い底面で暖められた空気は体積が膨張し、密度が小さくなるため上昇します。一方、温度が低い上面で冷やされた空気は体積が収縮し、密度が大きくなって下降します。この上昇気流と下降気流の間隔は上面-底面の温度差と距離で変化し、発生する渦はベナールセル、ベナール渦と呼ばれています。

 図5に温度分布とベクトル図を示します。解析結果から、ベナールセルが発生していることが分かります。

 室内の空調解析や筐体内の冷却解析なども、類似した入力ファイル一式を用いて解析できます。




関連記事/関連ページ


OpenFOAMの自由界面解析機能
OpenFOAMのドキュメント
OpenFOAMライブラリでプログラムを書く (1) 関数形
OpenFOAM 解析事例