Mat. Curve Modeller:遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール – 6

Mat. Curve Modeller:遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール – 6

Mat. Curve Modeller:
遅れて来たもう一つの材料データ作成ツール – 6

最適化ツールの機能の向上と相まって、非線形材料データの作成方法、検証方法は多くの研究者、企業からの提案があり、商品化もされています。弊社でも、独自の視点を形にした材料データ作成ソフトMat. Curve Modellerを2021年11月にリリースしました。以下に、開発者によるコラムをお届けします。

4回にわたってMat. Curve Modeller のMises⇔SAMP変換機能について解説しています。3回目の今回は塑性変形を伴うときの真応力の式を導出します。





前回のおさらい

 前回のおさらいとして、図1に弾性体の真応力導出のために用いた立方体の変形を示します。1辺がL 0 の立方体の左右の面を引張り、立方体を1軸引張状態としています。ここでは、左右の方向をX軸と一致させて考えます。 真ひずみは添え字 t、弾性ひずみは添え字 e をつけて表示しています。



 変形後の引張方向の真ひずみ、引張方向に対して垂直方向の真ひずみから、変形途中の真ひずみを求め、真応力は式(1)のように表せます。ここで、 P x は変形途中の引張荷重です。



弾塑性変形時の真応力

 式(1)を拡張することで、等方性弾塑性体の真応力の式を導出してみましょう。ここでは、真ひずみを弾性ひずみと塑性ひずみの和で表現する方法で考えます。弾性から弾塑性への変換、拡張は難しくはありません。なお、弾塑性構成則は履歴を考慮した構成則であるため、本来は増分形式で記述する必要があることに注意してください。ここでは、簡単のため、立方体を一方向に単調に引張変形させることを考えるため、増分量を積分した結果で示しています。



 表1に対応関係を示します。真ひずみは添え字 t、弾性ひずみは添え字 e、塑性ひずみは添え字 p をつけて表示しています。垂直方向のひずみでは、塑性ひずみの横に0.5があります。これは、塑性変形では体積が一定である、ということを意味しています。これについては、体積ひずみの式を考えると理解しやすいです。体積ひずみは真ひずみε (xx,t), ε (yy,t), ε (zz,t) の和で表されます。具体的には、式(2)に示すように、体積ひずみを計算することで確認できます。塑性ひずみによる変形の寄与はゼロとなります。また、ポアソン比が0.5の時、式(2)から体積ひずみはゼロ、つまり、体積変化はないことも理解できます。


 表1の対応関係を図1に当てはめてみましょう。その結果が図2です。そして式(3)が得られます。材料試験では弾性ひずみと塑性ひずみを含む公称ひずみを測定し、真ひずみに変換します。そこで、弾性ひずみを消去し、真ひずみと塑性ひずみで表現した結果を式(4)に示します。ここで、次の議論の準備を兼ねて、塑性ひずみを増分形式とし、積分で表示しています。






塑性変形時に体積(体積塑性ひずみ)が変化する場合

 樹脂材料は引張変形時に膨張すると言われています。微視的には、樹脂内部のボイドが引張変形によって拡張される、などが理由のようです。いずれにしても、膨張挙動を弾塑性材料構成則で表現するための1つの方法は塑性ポアソン比を導入することです。塑性ひずみに対するポアソン比です。式(4)にある「0.5」の部分を塑性ポアソン比に置き換え、塑性ポアソン比の値を0以上0.5以下と範囲を限定すれば、式(6)に示すように、体積ひずみに塑性変形に伴う体積変化(赤字部分)が加わります。




鳥と卵の関係

 式(4)や式(5)を見て、何か気づきませんか?真応力を計算するための式であるはずなのに、式(5)の右辺には真応力が含まれていますね。式(5)の元となった式(3) を再確認しますと、真応力の式には塑性ひずみが含まれています。しかし、塑性ひずみを求めるためには、式(7)に示す関係式、つまり、真応力と真ひずみとヤング率が必要です。つまり、鳥と卵の関係となっています。

 式(4)や式(5)は self-consistent equation と呼ばれており、方程式を解くことは可能です。Mat. Curve Modeller は反復計算によって、この方程式を解いています。


 次回は、今回導出した式(5)を使って、Mises⇔SAMP変換機能を考えます。




関連ページ/参考文献


竹越、丹羽、” MAT_SAMP-1樹脂材料データ作成技術の紹介”、LS-DYNA & JSTAMP Forum 2013 JSOL.

竹越、”塑性体積膨張を示す樹脂の材料データ作成手法の検討”、第57回日本学術会議材料工学連合講演会  日本材料学会 .

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