〇背景
本事例は、2024年12月に韓国の務安国際空港で発生した旅客機の胴体着陸事故を対象に、衝突および爆発に至るまでの一連の挙動を解析で模擬したものです。当該事故では、胴体着陸後に航空機が滑走路を逸脱し、滑走路端部に設置されていたコンクリート構造物に正面から衝突した後に爆発が発生し、大きな被害が生じました。衝突対象となった構造物は、着陸援助装置(ローカライザー)を設置するための盛り土と、その上に設置されたコンクリート製上板であり、約80トンの航空機が時速200~300km前後で衝突したと推定されています。
〇解析の概要
本解析では、LS-DYNAを使用し、以下のようなモデル化および解析条件を設定しています。
・航空機モデル:シェル要素でモデル化し、弾塑性体で破壊を考慮した材料モデルを適用しています。
・盛り土およびコンクリート構造物:ソリッド要素にてモデル化し、破壊を考慮した材料モデルを適用しています。
・盛り土の飛散挙動:盛り土が衝突の衝撃により飛散する様子を再現するため、キーワードADAPTIVE_SOLID_TO_SPHを用いて、要素が破壊された後にSPH粒子へと変換されるよう設定しました。
・燃料部の爆発模擬:燃料が残存していたと推定される部位には爆源を設定し、衝突後に生じた爆発による機体破壊をモデル化しました。
〇解析結果と実際の事故写真との比較
以下に示すのは、解析結果として得られた変形アニメーションです。実際に報道された現場映像や写真と比較すると、機体や盛り土の破壊状況が概ね再現できていることを確認できます。
【変形のアニメーション】
【機体の破壊状況】
【盛り土の破壊状況】
【実際の事故写真】
朝鮮日報より
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2024/12/31/2024123180018.html