CAEメールニュース(No.2018-12)
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ ┃CAEメールニュース(No.2018-12) 2018.12.21┃ ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ Terrabyte Co.,Ltd. ╋INDEX━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】今月のトピック ╋テラバイト技術通信 1「OpenFOAMあれこれ(1):解析ツールとしてのOpenFOAM」 ╋テラバイト技術通信 2「キャピラリー粘度測定の注意点」 【2】CAE技術情報 ╋やさしく見直すCAE技術 第6回 「固有値解析」 【3】CAEセミナー・イベント情報 【4】エッセイ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┌┐ └■ テラバイト技術通信 1「OpenFOAMあれこれ(1):解析ツールとしてのOpenFOAM」 OpenFOAMはC++で書かれたCFD(数値流体力学)クラスライブラリです。このライブラリは 全体で100万行以上のソースコードから成り立っています。また、OpenFOAMはオープンソー スとして無償でソースコードが公開されています。 しかし、OpenFOAMにはメッシュ作成や解析条件の設定などを行うためのGUI(グラフィカ ルユーザーインターフェース)は提供されていません。このため、メッシュ生成や解析を 実行するための設定ファイル(テキストファイル)はエディタで直接作成する必要があ ります。 当然のことながら、これらの設定を行うには説明書などのドキュメントが必要となります が、OpenFOAMにはインストールや簡単な使い方などのドキュメントが提供されているだけ です。このため、設計業務でCFDソルバーを利用される方にとっては,、安やためらいを 感じる方も多いのではないでしょうか? 設計者が利用できるOpenFOAMとするには、OpenFOAMがソースコードに組み込んでいる理論 から、入力設定ファイルの内容にいたるまで幅広いドキュメントが必要です。OpenFOAMを 利用されようとする方の中にはこれらのドキュメントの整備を望んでいる方が多いのでは ないでしょうか?当社ではOpenFOAMのドキュメントを作成しております。何かお役に立て ることがあればご連絡ください。 ・OpenFOAMサービス紹介 ---> http://www.terrabyte.co.jp/OpenFOAM/openfoam_1.htm ---------------------------------------------------------------------------------- ┌┐ └■ テラバイト技術通信 2 「キャピラリー粘度測定の注意点」 シミュレーションを行う上で、材料物性は非常に重要です。 樹脂の流動解析においては、粘度特性が解析結果に大きな影響を与えます。 樹脂の粘度特性を測定する代表的な方法としては、キャピラリー押出粘度計があります。 これは、シリンダーの先に付けられた小さな径のノズルを通して樹脂を一定速度で押出し、 この時の荷重や押出速度の測定値と、シリンダーやノズルの諸元から樹脂を非圧縮性の ニュートン流体と仮定して粘度を算出しています。 この測定方法は、シリンダー内の樹脂を任意な温度でコントロールする事が出来、また動 作原理も射出成形と同じである為、実際の成形機で使用される温度やせん断速度領域で計 測出来るので、幅広く利用されています。 ただし、高分子溶融体の樹脂は、圧縮性、非ニュートン流体としてのレオロジー特性を有 しているので、非圧縮/ニュートン流体と仮定して測定した値は、あくまで見掛けの粘度 となります。 シミュレーションとして流動過程での充填圧力などの精度を求めるのであれば、補正して 真の粘度特性を求める必要があります。 補正を行うデータは、 (1)ノズル内のせん断応力 ノズル内での圧力損失からのノズル内のせん断応力を算出しますが、圧縮性の影響でノズ ル流入部にも圧力損失が生じる為、見掛けのせん断応力になります。 ノズルの径/長さを変えて計測する事で流入部の圧力損失を算出して、真のせん断応力を 算出します。 (2)ノズル内でのせん断速度 ノズル径と押出時の体積流量からニュートン流体と仮定してノズル内でのせん断速度を算 出しますが、樹脂は非ニュートン流体である為、見掛けのせん断速度になります。 この見掛けのせん断速度に対して、(1)で算出した真のせん断応力を用いる事で、真のせん 断速度を算出する事が出来ます。 これらの補正を行う事で、真の粘度特性が求まります。 樹脂物性は、計測すれば完了と言う訳では無く、必要に応じて補正する必要があります。 当社で実施している「樹脂流体解析スキルアップセミナー」では、材料特性のみならず、物 性測定時の注意点など樹脂を用いた流動解析に必要なノウハウをご提供しています。 詳しくは、当社のホームページをご覧ください。 http://www.terrabyte.co.jp/seminar/fluid_semi.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┌┐ └■ やさしく見直すCAE技術 第6回 「固有値解析」----------------------------------- 前回のテーマで扱った「振動」にて、構造物の設計において固有振動数が重要な要素で あると説明しました。今回のやさしく見直すCAE技術では、固有振動数や振動時の構造物 の変形形状の特徴(振動モード)といった振動特性を把握するために行う「固有値解析」 について紹介します。 固有振動数とはすべての物体が持つ共振周波数のことで、端的に言えば揺れやすい周波 数のことです。構造物であれば、地震や風のような外乱に対して共振しないように対策す るためには、固有振動数を把握することが重要です。自動車であれば、走行時の車体にエ ンジンによる振動やタイヤノイズ等の様々な振動が発生します。これらの振動数が各部品 における固有振動数と一致すると、車体の振動が増幅するので、これを回避するためには 設計段階で固有振動数を把握しておく必要があります。 構造物の耐震設計に着目すると、構造物形状を質点系モデルに簡易化して固有振動数を 求める手法が定着しています。この手法は計算規模が小さい手法ですが、構造物全体の主 要な振動モードの特定は可能です。ところがこの手法では、質点系への簡易化に高度な技 術が必要になるうえ、フロアレベルの詳細な検証が難しくなります。そのため、計算機の 性能が発展した現在では、3次元FEモデルに対して固有値解析(モーダル解析)を実施す る事例が増えています。固有値解析の目的は、固有振動数の把握だけでなく、振動モード を把握することでもあります。振動モードを確認することにより、ねじれの発生や、局所 的に変形が発生するモードを把握することができます。 固有値解析における減衰について少し考えてみましょう (「減衰」の詳細につきまして は次回で触れたいと思います。) 。固有値解析には、減衰を考慮しない「実固有値解析」 と、減衰を考慮する「複素固有値解析」の2種類があります。実固有値解析では、式-1の ように質量マトリックス([M])と剛性マトリックス([K])だけで運動方程式を立て、複素固 有値解析では式-2のように減衰マトリックス([C])を含む項が存在します。モデルによっ ては式-1でも複素数の解が発生することがありますが、式-2では減衰項が一階微分のため、 ほぼ確実に複素数解が出てきます。 [M]{d^2x/dt^2} + [K]{x} = 0 式-1, [M]{d^2x/dt^2} + [C]{dx/dt} + [K]{x} = 0 式-2 多くのケースでは実固有値解析で行われますが、複素固有値解析が推奨されるケースも あります。例えば自励振動が発生するケースです。自励振動とは、振動成分を含まない外 力を物体に加えたときに、外力と物体間の相互作用で物体に振動が発生し、その振幅が増 幅する振動のことを言います。すなわち負の減衰で表すことができる状態となります。振 動問題でしばしば取り上げられる、タコマナローズ橋の崩落原因もこの自励振動によるも のとされています。 構造物の設計にはもちろん、ものづくりの現場でも共振によって不具合や事故が発生し ています。固有値解析は振動特性を理解するうえで大変有効な手段です。正しく活用し て、安全で質の高いものづくりになるよう筆者も精進してまいります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┌┐ └■ CAEセミナー・イベント情報---------------------------------------------------- 当社では解析ソフトをより有効にご活用いただくことを目的とし、各種セミナーを開催い たしております。各ソフトの操作性や機能をご確認いただく場として、お気軽にお申し込 みください。 □ 設計者のための熱流体解析ソフト「FloEFDシリーズ」 紹介セミナー&無料体験ワークショップ (1/10 東京) http://www.terrabyte.co.jp/FloEFD/EFD-seminar1.htm?cae □ 筋骨格モデリングシミュレーション「AnyBody」 紹介セミナー (1/11 東京) http://www.terrabyte.co.jp/AnyBody/anybody_semi.htm?cae □ 「基礎構造講座」-衝撃工学の基礎-(1/16・17 東京) http://www.terrabyte.co.jp/seminar/strcture_semi.htm?cae □ 汎用熱流体解析ソフトウェア「AcuSolve」 紹介セミナー (1/18 東京) http://www.terrabyte.co.jp/Hyper/AcuSolve_seminar.htm?cae □ ブロー成形・樹脂シート熱成形プロセス解析ソフトウェア 「BlowView」/「FormView」紹介セミナー (1/22 東京) http://www.terrabyte.co.jp/BlowView/seminar1.htm?cae □ 筋骨格モデリングシミュレーション「AnyBody」 基礎トレーニングセミナー (1/23 東京) ※Anybodyの学生ユーザ様限定のセミナーです。 http://www.terrabyte.co.jp/AnyBody/anybody_semiN.htm?cae □ 非線形構造解析ソフト「LS-DYNA」技術セミナー 「塑性加工技術セミナー 初級編」 (1/24 東京) http://www.terrabyte.co.jp/lsdyna/LS-DYNA_seminar1.htm?cae □ 電磁波解析ソフトウェア「Altair Feko」 紹介セミナー (1/30 東京) http://www.terrabyte.co.jp/Hyper/Feko_seminar.htm □ LS-DYNAプリポストプロセッサ「Jvision」操作セミナー (2/5 東京) ※当社のLS-DYNA/JVISION保守ユーザ様限定のセミナーです。 http://www.terrabyte.co.jp/Jvision/Jvision_semi.htm?cae □ 電磁界解析ソフト「INTEGRATED 電磁界ソフトウェア」無料体験セミナー (2/13 東京) http://www.terrabyte.co.jp/IES/IES-seminar1.htm?cae □ 非線形構造解析ソフト「LS-DYNA」操作セミナー (2/14 東京) ※当社のLS-DYNA保守ユーザ様限定のセミナーです。 http://www.terrabyte.co.jp/lsdyna/LS-DYNA_seminarN.htm?cae ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┌┐ └■ エッセイ--------------------------------------------------------------------- 数日前、ぎっくり腰になってしまいました。。。 重い物を持ったわけでもないのですが、何の前触れもなく、突如鋭い痛みが走り次の瞬間 には立てなくなってしまいました。 なられた事のある方はご承知の通り、まさしく歩くのもままならないといった感じで本当 につらいですね。 治し方も、冷やした方が良い場合もあれば温めた方が良い場合もあり、安静が良いと言う 人もいれば無理にでも動かした方がと言う人もおりまちまちみたいです。 年末の忙しい時期なので寝てばかりもいられませんが発症後1年間の再発率が25%もある との事でなるべく安静にしたいと思います。 皆様も年末の大掃除など普段取らない姿勢や重いものを持つ際は十分気を付けて下さい。 T.H ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┌┐ └■ 購読者アンケート ------------------------------------------------------------ 購読者様へCAEメールニュースについてのアンケートをお願いしております。 ぜひご協力ください。 http://www.terrabyte.co.jp/example/mailnews/mailnews_sformmail.php ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋ ━━━<編集後記>━━━━━━━━━━………………‥‥‥‥・・・・・・ ・ ・ ・ ・ あっという間に今年も年の瀬ですが、まだバタバタしている最中で今年1年を振り返るのは 来週以降になりそうです。 来年は本メールニュースのリニューアルを企画中ですので、ぜひ、来年もよろしくお願い いたします。今年1年ご購読いただいたた皆様方、ありがとうございました。 良いお年をお過ごしください。 E.Ikeda ・ ・ ・ ・ ・・・・・・‥‥‥‥………………━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆ 本情報は、予告無く変更される場合があります。最新情報に関してはテラバイトHP からご確認ください。http://www.terrabyte.co.jp ☆ 掲載されている会社名・製品名は、各社の登録商標または商標です。 ☆ 掲載記事の無断転載を禁じます。文中の商標等は各社に属します。 ☆ 発行:(株)テラバイト 東京都文京区湯島3-10-7 NOVビル5F 編集担当:池田 絵美 ☆ 発行者Webサイト: http://www.terrabyte.co.jp ☆ Copyright(c) Terrabyte Co.,Ltd ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━