樹脂成形とレオロジー第38回「キャピラリー押出粘度計でのせん断速度補正式の導出」

株式会社テラバイト
前回、キャピラリー押出粘度計の原理と式の紹介を行いました。図1にこの粘度計での真粘度算出のための手順の概略を示します。測定に用いる溶融樹脂は粘性と弾性の性質を併せ持ち、粘度はせん断速度に依存する非ニュートン性の材料です。
弾性の性質がなければリザーバ内の圧力がそのままノズル内流動に消費されるとみなせますが、弾性を持つ材料ではリザーバからノズルに入るとき急激な速度変化に伴う付加圧損が発生します*。したがってこの付加圧損を見積もってキャンセルしておく必要があります。このための一つの手段がBagleyの管長補正です。これにより真の管壁せん断応力が算出できます。一方、ニュートン流体とみなしたときの見かけの管壁せん断速度を非ニュートン流体の真の管壁せん断速度に直す手法がRabinowitsch(ラビノビッチ)の補正になります。この両方の補正により真の粘度が求められます。
前回はBagleyの管長補正について詳しく説明しました。一方、 Rabinowitschの補正は最終補正式だけを紹介しておきましたので、ここではその式を導くことにします。
*弾性の性質を持たないニュートン流体でも慣性力が大きくなれば付加圧損を生じますが樹脂流動の実験では弾性による付加圧損に比べ値が非常に小さいので解析上は慣性力の影響は無視して差し支えありません。
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図1 キャピラリー押出粘度計と真粘度算出のための手順の概略
指数則流体を用いた場合
ここでは以下の前提を設けます。
①ノズル内を指数則流体が等温、定常、層流状態で流動する。
②Bagleyの補正などにより管壁せん断応力は真の値\(\tau_{W}\)が求められているとする。
押出実験で直接得られるせん断速度はニュートン流体とみなしたときの見かけの値です。これは円管内の運動方程式の解からから次式で得られます。
$$
\dot{\gamma}_{W}^{\prime} = \frac{4Q}{\pi R^{3}}
\qquad \text{・・・・・・・(1)}
$$
ここで、\(\dot{\gamma}_{W}'\):見かけの管壁せん断速度、\(Q\):体積流量、\(R\):ノズル半径です。一方、指数則流体では次式となります。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \left(\frac{3n + 1}{n}\right)\frac{4Q}{\pi R^{3}}
\qquad \text{・・・・・・・(2)}
$$
ここで、\(\dot{\gamma}_{W}\):指数則流体での真の管壁せん断速度、\(n\):構造粘度指数です。(1),(2)式から次式が得られます。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \left(\frac{3n + 1}{4n}\right)\dot{\gamma}_{W}^{\prime}
\qquad \text{・・・・・・・(3)}
$$
図2に指数則流体の\(\dot{\gamma}_{W}'\) - \(\tau_{W}\)特性を示します。両対数座標上で直線関係が得られます。この勾配が構造粘度指数\(n\)となります。
$$
n = \frac{\Delta \log \left(\tau_{W}\right)}{\Delta \log \left(\dot{\gamma}_{W}^{\prime}\right)}
\qquad \text{・・・・・・・(4)}
$$
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指数則流体の\(\dot{\gamma}_{W}'\) - \(\tau_{W}\)特性
構造粘度指数\(n\)が与えられますので(3)式で実験で得られた見かけのせん断速度を真の値に変換でき、真のせん断応力と真のせん断速度の関係を用いて真の粘度が求められます。
指数則流体以外の非ニュートン流体への適用
(4)式の関係を用いて(3)式の\(n\)を書き換えてまとめると次式が得られます。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \left(\frac{3}{4} + \frac{1}{4}\frac{\Delta \log \left(\dot{\gamma}_{W}^{\prime}\right)}{\Delta \log \left(\tau_{W}\right)}\right)\dot{\gamma}_{W}^{\prime}
\qquad \text{・・・・・・・(5)}
$$
指数則流体以外の非ニュートン流体での\(\tau_{W}\) - \(\dot{\gamma}_{W}'\)特性を図3に示します。両対数座標上で直線になりません。
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図3 指数則流体以外の非ニュートン流体での\(\tau_{W}\) - \(\dot{\gamma}_{W}'\)特性
この場合は特性曲線の各ポイントでの変化率を近似的に求める作業が必要となります。微分形式を用いると(5)式は次式となります。図3の関係のグラフから各ポイントでの変化率を読み取り、そのときの\(\tau_{W}\)と\(\dot{\gamma}_{W}'\)の値を用いて真の管壁せん断速度\(\dot{\gamma}_{W}\)が計算できます。そして\(\tau_{W}\)と\(\dot{\gamma}_{W}\)の関係から各ポイントでの真粘度が計算できます。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \left(\frac{3}{4} + \frac{1}{4}\frac{d \log \left(\dot{\gamma}_{W}^{\prime}\right)}{d \log \left(\tau_{W}\right)}\right)\dot{\gamma}_{W}^{\prime}
\qquad \text{・・・・・・・(6)}
$$
Rabinowitsch(ラビノビッチ)の補正式の一般的な表示法
一般的には次の表示法を用いることが多いです。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \frac{3}{4}\dot{\gamma}_{W}^{\prime} + \frac{\tau_{W}}{4}\frac{d\left(\dot{\gamma}_{W}^{\prime}\right)}{d\left(\tau_{W}\right)}
\qquad \text{・・・・・・・(7)}
$$
指数則流体の構成方程式は次式となります。
$$
\tau_{W} = \kappa_{a} \dot{\gamma}_{W}^{\prime\, n}
\qquad \text{・・・・・・・(8)}
$$
ここで\(\kappa_{a}\):見かけの擬塑性粘度です。(8)式の関係を用いると(7)式は先に示した(3)式の形に帰結します。
$$
\dot{\gamma}_{W} = \left(\frac{3n + 1}{4n}\right)\dot{\gamma}_{W}^{\prime}
\qquad \text{・・・・・・・(3)}
$$
結局、(7)式を用いても(5)、(6)式の形にできます。
なお、誤差の補正方法の実習、ならびに別の補正方法の紹介などは弊社「樹脂流動解析スキルアップセミナー」で行っておりますのでご利用ください。
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