Case

解析事例

衝撃による構造挙動の考え方

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Ansys LS-DYNA

1. 吸収エネルギーから考える衝突力

図1.1に示すような最も単純な衝突問題を考えてみましょう。
一端を固定された長さL、断面積Aの弾性棒のもう一方の端面に、質量Mの剛体が速度 で衝突する場合を考えます。 

  • article_dyna-analysis-62-01
    【図1.1 剛体と棒の衝突】

剛体の持っている初期の運動エネルギーが、衝突によって棒の歪エネルギーに全て変換されるとします。衝突によって棒の長さが⊿Lだけ圧縮されたとしますと、力学的エネルギーの保存式は以下のようになります。 

  • article_dyna-analysis-62-02

従って、棒に生じる歪 は、圧縮を負とすれば、 

  • article_dyna-analysis-62-03

となります。この時、棒に発生する応力は、フックの法則より次式で表わされます。 

  • article_dyna-analysis-62-04

ここで求めた歪と応力は、剛体の運動エネルギーを棒の歪エネルギーとして完全に吸収したときに発生するものですから、衝突の瞬間ではなく、剛体が棒に衝突した後、棒の圧縮変形が最大になったときに発生するものです。 

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2.剛体の運動方程式

剛体が棒に衝突した瞬間から、剛体は棒と一体となって運動するものとします。
剛体の運動方程式は、剛体の慣性力と棒から受ける反力との釣り合いから以下のように求められます。 

 

  • article_dyna-analysis-62-05

ここにxは棒の先端の変位とします。この方程式を初期条件 

  • article_dyna-analysis-62-06

のもとに解きますと、棒の先端の時間変化は周期振動解として次のように得られます。 

  • article_dyna-analysis-62-07

ここで、 で、棒の固有振動数に相当します。
実際一次元のバネ・マスモデルを考えますと、 ばね定数をとしたものと等価になります。
発生応力も同様にsin波で振動し、 

  • article_dyna-analysis-62-08

 これは、時刻 

のとき圧縮力が最大となり、先に求めた応力と一致します。
以上の考え方は

(1)棒の密度を無視している
(2) 棒に生じる歪は、棒の長さに亙って一様に生じている

ことを仮定しており、次に説明します衝撃応力の考え方と大きく異なる点です。

Ansys LS-DYNA

3. 応力波の伝播を考えた衝撃力

棒が衝突すると、棒の内部には応力波が発生し、応力波は棒の物性より決まる伝播速度で棒の内部を伝播します。
この応力波は、棒の一端が衝突したという情報を周りに伝える役を果たしますが、ちょうど音波が音を伝え、光が映像を伝えるのと同様な役割を果たします。 

  • article_dyna-analysis-62-10
    【図3.1 衝撃と波の伝播】

先の例題と同じように、剛体が棒に速度で衝突する場合を考え、応力波の伝播を考慮して衝撃力を計算してみます。

図3.2のように衝突後の⊿tだけ時間が経過した後には、応力波は

  • article_dyna-analysis-62-11

だけ進み、応力波が通過した部分の棒の粒子は、衝突速度と等しいの速度を持ちます。

剛体が衝突した棒の端面はこの間に

  • article_dyna-analysis-62-12

だけ変位します。
勿論、まだ応力波が到達していない区間には何の変化もありません。 

  • article_dyna-analysis-62-13
    【図3.2 応力波の伝播と衝撃】

 図3.2 応力波の伝播と衝撃

⊿t時間経過後、応力波がすでに伝わった区間

  • article_dyna-analysis-62-14

の部分に生じた歪εは、棒の先端の変位

  • article_dyna-analysis-62-15

を考慮して次のようになります。

  • article_dyna-analysis-62-16

従って、ここに生じる衝撃応力σは次式となります。

  • article_dyna-analysis-62-17

さて、剛体がこの間に棒に対して与えた力積を考えますと、

また、棒は区間 が初期には速度ゼロであったものが、⊿t時間 後に速度 となったわけですから、この間の運動量変化は、

  • article_dyna-analysis-62-18

となります。
力積は運動量変化に等しいので、次のように衝撃応力σを求めることもできます。

  • article_dyna-analysis-62-19

これは上で得られた衝撃応力と等しいですから、両式からσを消去しますと応力波の伝播速度が次のように表わされます。

  • article_dyna-analysis-62-20

この式は、応力波の伝播速度が物性特性だけから決まる事を示しており、物性固有の値であることが分かります。
応力波の伝播速度のことを音速とも呼びます。
ここでは一次元の棒を考えましたが、一般には三次元体で考える必要があり、その場合には、
応力波伝播速度 は次式となります。 

  • article_dyna-analysis-62-21

ここに、Kは材料の体積弾性率、Gはせん断弾性率です。
表3.1は代表的な材料について応力波伝播速度を示したものです。

 

 

さて、衝撃による構造の応答挙動を単純な一次元弾性棒を例に説明いたしましたが、上の1,2で考えた結果と3で考えた結果には大きな食い違いがあります。
衝撃応力は、エネルギーから考えた場合には式(3)で与えられます。

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これは、剛体の質量Mと衝突速度 、棒のヤング率、形状から決まり、衝突の瞬間から 

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時間経過後に生じます。
式(6)から分かりますように衝突の瞬間では発生応力はゼロです。
一方、応力波から考える場合には、式(9)に式(10)を代入して、 

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のように表わされます。この衝撃応力が生じるのは、衝突の瞬間からであり、その大きさは、棒の密度とヤング率及び剛体の初速度から決定されます。
2つの考え方による結果はまるで異なった物となっていますが、これは先に挙げたように、前者の考え方が棒の密度を無視したこと、棒の歪は一様に生じることと仮定したことによるものです。
一概には言いきれませんが、前者は所謂振動解析による考え方に準じており、後者は衝撃解析による考え方と言っても良いでしょう。

ここで求めた歪と応力は、剛体の運動エネルギーを棒の歪エネルギーとして完全に吸収したときに発生するものですから、衝突の瞬間ではなく、剛体が棒に衝突した後、棒の圧縮変形が最大になったときに発生するものです。

 

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