車両ライブラリを用いたコントロールアームの応力評価

車両ライブラリを用いたコントロールアームの応力評価

はじめに

車両部品の構造強度や耐久性を評価するにあたり、実機試験では試験設備の制約や、走行条件の再現性確保、試験コストの負担といった課題が生じます。そのため、CAEを活用した仮想試験により事前に傾向を把握し、設計段階でメカニズムを理解しておくことが求められています。本事例ではAltair MotionSolve(Altair HyperWorks製品の機構解析ソルバー)の車両ライブラリを用いてスピードバンプ走行時の部品荷重を算出し、その結果をAnsys LS-DYNAの境界条件として設定することで、コントロールアームに生じる応力を評価しました。

Altair MotionSolve 車両ライブラリ

以下はMotionSolveによるスピードバンプ(車速を減速させる目的で道路上に設置される突起形状)通過時の車両足回り挙動の解析アニメーションです。MotionSolveは機構解析ソフトであり、車両を構成する各部品を主に剛体として扱うため、LS-DYNAなどのFEM解析と比較して計算コストが低い点が特徴です。例えば、走行時間10秒程度の車両解析であれば、一般的なワークステーション環境において1分程度で計算が完了します。
MotionSolveには車両のタイプ(セダン、トラック、2輪車、トライク等)やサスペンション方式、駆動方式、ABSの有無などのプリセットが用意されています。また、走行パターンについても、直進、スラローム走行、レーンチェンジなどのプリセットが用意されており、ユーザはこれらの中から車両タイプおよび走行シナリオを容易に設定することが可能です。

MotionSolve スピードバンプ走行解析

コントロールアームの応力解析

MotionSolveによるスピードバンプ走行解析で得られるフロント側コントロールアームにかかる荷重を、LS-DYNAの荷重境界条件として設定し、コントロールアームの応力解析を実施しました。本事例では下図に示すスピードバンプの高さ(Height)がコントロールアームに与える影響を検証します。


図 スピードバンプの高さ(Height)
※図は15cm時

①MotionSolveによるスピードバンプ走行解析

下図左にフロント足回りの部品群を示します。サスペンション構造はストラット式であり、コントロールアーム(ロアアーム)はエンジン側の前後2か所で車体フレーム(図では非表示)と結合されています。一方、反対側はナックルを介してストラット(ショックアブソーバを含む支柱部分)と接続されており、横方向(Y軸方向)の剛性を担っています。

下図右はナックルからコントロールアームに伝達される荷重時刻歴であり、バンプ高さ(Height)7 cmと15 cmの解析結果を比較しています。0.8 sec付近で前輪がバンプに乗り上げており、特に-Y方向に顕著な荷重が発生しています。また、バンプ高さが荷重のピーク値およびピーク後の振動挙動に影響を与えていることが分かります。


図 フロント足回り部品群およびナックル接続部の荷重時刻歴(MotionSolve)

②LS-DYNAによる応力評価

下図左に示すように、前後フレーム結合部を完全拘束とし、ナックル結合部にMotionSolveで得られた荷重時刻歴を入力し、LS-DYNAによる応力評価を行いました。下図はバンプ高さ7 cm(左)および15 cm(右)の解析結果で得られた応力分布であり、いずれの場合も最大応力はフロント側結合部付近で発生しています。また、バンプ高さが約2倍になると、最大応力は約3倍程度に増加する傾向が確認できます。


図 LS-DYNAによる応力評価

まとめ

MotionSolveの車両ライブラリを使用して、スピードバンプ走行解析を実施しました。本事例では、解析により得られたコントロールアームの荷重時刻歴をLS-DYNAの境界条件として用い、応力評価を行う手法をご紹介しました。MotionSolveの車両ライブラリを活用することで、様々な車両タイプ、サスペンション方式に加え、複数の走行シナリオを想定した部品荷重に基づく評価が可能となります。

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