コーナリフレクタのバイスタティックRCS解析

コーナリフレクタのバイスタティックRCS解析

概要

 互いに直交した導体板からなる3面コーナリフレクタは、広い入射角にわたって大きいレーダ断面積(RCS: Radar Cross Section)を持ち、追尾レーダの標的やラジオビーコンなどに利用されます。ここでは、ホーンアンテナからの照射に対する3面コーナリフレクタのRCSを異なるソルバーで解析し、それらの結果と計算コストを比較します。

 

解析モデル

 図1にホーンアンテナと3面コーナリフレクタの解析モデルを示します[1]。3面コーナリフレクタは互いに直交した3枚の導体板(1辺15cmの正方形)で構成されています。ホーンアンテナから照射される周波数10GHzの電磁波が、3面コーナリフレクタに入射する場合のバイスタティックRCS[2]を算出します。

 

図1 ホーンアンテナと3面コーナリフレクタの解析モデル

 

[1] 平野,北川,“物理光学法を用いた3面コーナリフレクタのRCS解析”, 電学論A, 117巻5号, pp.469-47651,1997

[2] レーダの送信アンテナと受信アンテナが異なる位置にある場合のRCSをバイスタティックRCSといいます。

 

解析結果

 このモデルのバイスタティックRCSを、モーメント法(MoM)、幾何光学法(GO)、物理光学法(PO)の3つのソルバーで解析しました。なお、GOおよびPOの場合は、ホーンアンテナを単独で解析して抽出した球モード等価波源を用いています。リフレクタへの入射角度は、方位角φ45°、仰角θ 54.7°で一定とし、仰角θが0~90°の範囲でのRCSを算出しています。図2に偏波角90°(水平偏波)の解析結果を、図3に偏波角45°の解析結果を示します。仰角θが45~65°の範囲での解析結果は、3つのソルバーで概ね一致しています。一方、0~90°の範囲では解析結果が異なっていますが、これは導体版のエッジからの反射量が増加しGOとPOでは誤差が増加するからと推察されます。

    図2 バイスタティックRCS(偏波角90°)

 

    図3 バイスタティックRCS(偏波角45°)

 

計算コスト

 表1に、偏波角90°(水平偏波)の解析における計算コストを示します(偏波角45°の場合もほぼ同様です)。高周波近似法であるGO、POの場合は、完全解法であるMoMの場合に比べて、所要メモリおよび計算時間が少なくて済みます。GOに比べてPOの計算時間が多くなっているのは、 POでは多重反射の影響を考慮した計算が必要になるためです。

 

表1 各ソルバーの計算コスト

 

まとめ

 ホーンアンテナからの照射に対する3面コーナリフレクタのバイスタティックRCSを、モーメント法(MoM)、幾何光学法(GO)、物理光学法(PO)の各ソルバーで解析し、それらの結果と計算コストを比較しました。高周波近似法であるGO、POでは、完全解法であるMoMに比べて、所要メモリが少なくて済みました。一方計算時間については、 MoMに比べて GOは少ないですがPOは多くなりました。POでの計算時間増大の要因は、多重反射の影響を考慮した計算が必要になることにあります。
 Fekoでは、解析の目的、モデルの規模、計算機の性能などを考慮して様々な手法を選択し、RCSの検討をすることができます。

 

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