繊維配向解析結果を利用した構造解析

繊維配向解析結果を利用した構造解析

1.繊維含有樹脂における構造解析の課題

繊維含有樹脂で構造解析を実施する場合、一般的に均質な機械特性として解析を実施する事が多い。
しかしながら実際は、繊維が含有した樹脂を射出成形した場合、繊維は樹脂の流れによって運ばれ、流動方向に応じて繊維も方向が変化する。すなわち繊維配向が生じる。繊維含有樹脂では、機械特性が繊維の配向状況により変化する。
この為、繊維含有樹脂で構造解析を実施する場合、配向により変化する機械特性を考慮させる必要がある。図1に示すアルテア社の各ソフトを組み合わせる事で繊維配向による機械特性を反映した構造解析が可能となる。

Step-1:InspireMoldによる配向テンソルの算出
Step-2:MultiScaleDesignerによる繊維含有樹脂の機械特性の算出
Step-3:Step-1/2のデータを利用したHyperWorksによるOputistruct用データの書き出し
Step-4:Oputistructによる構造解析

本事例では、ゲート位置によって変化した繊維配向を使った応力分布の違いを比較する。
図2に比較するゲート案により、図3に示す構造解析の条件で比較する。

図1.繊維配向を利用した構造解析の流れ

図2.ゲート案

図3.構造解析条件

2.ゲート位置による繊維配向の比較

図4にInspireMoldeで計算したゲートA・B案の射出時間と配向テンソルを示す。
(InspireMoldでは、材料データに繊維の特性(主に繊維のアスペクト比)を設定する事で、充填中の繊維の運動を計算して、配向テンソルの出力が可能。)

図4.InspireMoldでの流動解析結果(射出時間と配向テンソル)

3.MultiScaleDesingerによる繊維含有樹脂の機械特性

図5にMultiScaleDesingerでモデル化する繊維含有樹脂と算出した機械特性を示す。
(MultiScaleDesignerでは、樹脂に含有する繊維と母材となる樹脂をモデル化して、繊維の向きに応じた機械特性が得られる。)

図5.MultiScaleDesignerでの繊維含有樹脂モデルと機械特性

4.HyperWorksを用いた配向テンソルのマッピング

図6にHyperWorksを利用してOptisturuct用メッシュにマッピングした配向テンソルを示す。
(HyperWorksには、InspireMold用メッシュの配向テンソルをOptistruct用メッシュにマッピングする機能がある。)

図6.各ゲート案での流動解析結果と構造解析メッシュにマッピングした配向テンソル

5.繊維配向による応力分布の比較

図7・8・9にゲート位置による繊維配向の違いを考慮した構造解析結果を示す。
荷重による変形では、成形品全体に荷重が分散するため、異方性の影響が小さく、ゲートA・B間で変位量の差は小さい。一方最大主ひずみ・応力ともゲートA案が大きくなっている。図10に各ゲート案でのひずみテンソル・繊維配向テンソルの主成分を比較した結果を示す。ゲートA案では、ひずみの主方向と繊維配向の主方向が直交している事が確認出来る。繊維含有樹脂では引張強度は、繊維と平行方向では高く、直交方向では低下する為、ゲートA案では、ひずみが大きくなり、応力も20%高くなる。

図7.ゲート位置による構造解析結果比較(変位量)

図8.ゲート位置による構造解析結果比較(最大主ひずみ)

図9.ゲート位置による構造解析結果比較(最大主応力)

図10.各ゲート案での繊維配向テンソル・ひずみテンソル比較(最大主成分)

6.まとめ

繊維含有樹脂では、繊維の配向状況により機械特性が変化する。これにより、応力が集中する部位では、配向状況を反映する事で応力値や分布に違いが生じる。
同じアルテア社のInspireMoldとHyperWorks、MultiScaleDesignerを組み合わせる事により、繊維含有樹脂の繊維配向の影響を構造解析に簡単に反映さる事が可能となる。

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