回転ドラム型造粒装置による錠剤コーティング解析

回転ドラム型造粒装置による錠剤コーティング解析

1. はじめに

医薬品、化学薬品における錠剤のフィルムコーティング、糖衣コーティング、食品分野における製菓において、対象物(ターゲット粒子)の表面にコーティング処理を行う際、コーティング剤を均一に吹き付けられるか、つまり、ばらつきを抑えることが重要になります。例えば、回転ドラムを使った転動造粒機の場合、回転ドラムの形状や傾斜角度、回転数、バッフルの有無などの条件がコーティング剤のばらつきに影響します。本事例では、バッフルのありとなしで、ばらつきの違いについての比較例を紹介します。

ケース バッフル
ケース1 なし
ケース2 あり

 

スプレーコーティングモデルの概要

※EDEMでは、コーティング剤も粒子として解きます。
ターゲット粒子とコーティング粒子同士が衝突すると、コーティング量を表すパラメータをターゲット粒子に渡し、最終的にコーティング粒子は消滅します。その分、ターゲット粒子の径は大きくなります。

EDEMのコーティング機能

2. 計算条件

粒子設定

・ターゲット粒子

形状 球形
直径 2mm
投入粒子数 20,000個

・コーティング粒子

形状 球形
単位時間当たりの

投入粒子数

5,000個/秒
総投入粒子数 150,000個 (30秒間)

※マルチ球体法により、球形以外の形状も再現可能です。

 

 

 

スプレーノズルのモデル

ドラムの設定

 

バッフル ケース2のみ4枚配置
ドラムの回転数 12rpm
傾斜角度 0度(水平)

※形状データを回転させることで、傾斜角度を変更することも可能です。

 

 

回転ドラムのバッフル

3. 解析結果

アニメーション

コーティング粒子をシアンで示します。また、ターゲット粒子のコンターは、コーティング量を表します

スプレーコーティング、ケース1、バッフルなしの結果

ケース1(バッフルなし)

ケース1 断面
60秒の時点でも、内部にコーティングされていない粒子が残ります

スプレーコーティング、ケース2、バッフルありの結果

ケース2(バッフルあり)

スプレーコーティング、ケース2、バッフルありの断面結果

ケース2 断面
40秒の時点で、内部までコーティングされています

ばらつきの評価

均一にコーティングできているかを調べるため、理想混合状態からのばらつきを示す指標Sを計算します。粒子数をn、理想混合状態におけるコーティング量をx、各時刻での各粒子のコーティング量をxiとすると、次式で表されます。

コーティング量がゼロ、つまり全くコーティングされていない場合は1となり、数値が小さくなるほど理想状態からの差、つまりばらつきが小さく、均一に混合できている状態と判断できます。各ケースについてこの指標を計算すると、全体的にケース2の方が小さく、均一に混合できていることが分かります。

 

 

コーティング量の理想値に対する相対標準偏差の時間変化

4. まとめ

  • バッフルなしのケース1では、均一にコーティングができていません。特に、内部にコーティングされていない粒子が残り、偏析が見られました。
  • バッフルありのケース2では、内部まで十分にコーティングされています。
  • 理想状態からのばらつきを定量的に評価することができます。

評価指標を作成することで、バッフルの有無以外にも、ドラム形状やバッフル形状、ドラム回転数など、その他の条件の検討も行うことができます。

EDEM解析事例カテゴリの最新記事