鋼板補強コンクリート(SC)構造に対する飛来物衝突の数値解析

株式会社テラバイト
要点
-
コンクリート破壊後のデブリ挙動を考慮するSolid2SPH手法を提案
-
従来手法では無視される裏面鋼板への荷重伝達を再現
- 実験比較により貫通挙動・残留速度・裏面鋼板変形を高精度に再現
概要
本研究では,鋼板補強コンクリート(SC)構造に対する飛来物衝突解析において,破壊後挙動の高精度な再現を目的とし,有限要素法(FEM)と粒子法であるSPHを組み合わせたSolid2SPH手法を提案した。従来から利用されている要素削除手法(以下,従来手法)では,コンクリート破壊後に発生するデブリの影響を考慮できず,裏面鋼板への荷重伝達を適切に評価できない課題があった。本手法では,破壊した要素をSPH粒子に変換することにより質量と運動量を保存しつつデブリ挙動を模擬し,実験結果との比較によりその有効性を示した。
研究背景
原子力施設などの重要構造物では,航空機衝突などに対する耐衝撃性能評価が重要である。鋼板補強コンクリートは従来の鉄筋コンクリートに比べて高い耐衝撃性能を有することが知られている。しかしながら,従来の数値解析ではコンクリート破壊表現に従来手法が広く用いられており,破壊後に発生するデブリの影響が無視されている。その結果,裏面鋼板の変形や破断挙動を過小評価する可能性がある。
本研究では,この課題に対し,破壊後挙動を連続的に評価可能な手法としてSolid2SPH手法を導入した。
研究成果
図1に有限要素モデルの全体構成を示す。解析モデルでは,コンクリートをソリッド要素,鋼板をシェル要素,スタッドをビーム要素として表現した。飛来体は航空機エンジンを模擬した構造とし,150 m/sで衝突させた。
Solid2SPH手法では,破壊したコンクリート要素をSPH粒子へ変換することで,デブリの飛散と衝突挙動を連続的に表現する。粒子には破壊後の材料状態を反映させ,剛性低減を考慮した。
-
図 1 解析モデル
図2に変形挙動を示す。貫通ケースでは,従来手法は局所的破断となるのに対し,本手法ではデブリを介した荷重伝達により広範囲に変形が生じ,実験に近い挙動を示した。
-
図2 変形挙動(左図:従来手法,右図: Solid2SPH手法)
図3に速度履歴を示す。残留速度についても本手法は実験結果と良好に一致し,デブリが飛来体の減速に寄与することを再現した。
-
図3 速度履歴
図4に裏面鋼板の破断範囲を示す。実験に近い破断範囲の広がりを再現可能であることを確認した。
-
図4 裏面鋼板の破断範囲
(左図:従来手法,中央図: Solid2SPH手法,右図:実験結果)
関連分野へのインパクト
本手法は破壊後挙動を考慮した高精度な衝撃解析を実現するものであり,原子力施設や防護構造物の安全設計において有用である。
結論
本研究では,コンクリート破壊後のデブリ挙動を考慮するSolid2SPH手法を提案した。本手法により,貫通挙動,残留速度,裏面鋼板変形を高精度に再現可能であることを確認した。
論文情報
掲載:SMiRT27プロシーディングス(2024)
タイトル:Numerical Study of Projectile Impacts on Steel Plate Reinforced Concrete Using FEM to SPH Adaptive Method
著者:新井 弘樹,川端昌史,桑村美也子,竹越邦夫,丹羽一邦
用語説明
SPH:粒子法の一種であり,大変形や破壊現象の解析に適した手法。
Solid2SPH:破壊要素をSPH粒子に変換することで挙動を追跡する手法。
関連記事/関連ページ