OpenFOAMによる多色刷インクジェット解析

OpenFOAMによる多色刷インクジェット解析

OpenFOAMによる多色刷インクジェット解析

OpenFOAMはオープンソースの熱流体解析ソルバーで、VOF法による自由界面の計算が行えます。
本コラムでは、インクジェット解析にOpenFOAMを用いるメリットを解説します。

※ OpenFOAM:世界中の有志によって開発されたオープンソースCFDソフトウェア。
GNU General Public Licenseに準拠したフリーソフトで、OpenFOAM財団のホームページからダウンロードして自由に使用できる。





ミネラルウォーターの「水面」とドレッシングの「界面」

自由界面とは、2つの混ざり合わない流体のあいだに形成される明確な界面をいいます。
自由界面の代表格は、水と空気の界面である「水面(水の表面)」です。PET容器に入ったミネラルウォーターを勢いよく振ると、水面は乱れ、水しぶきとなって容器内を暴れまわりますが、振るのを止めると水面は一枚の滑らかな膜に戻ります。このように、自由界面は「自由」に形を変える性質を持っています。
セパレートタイプのドレッシングでは、容器上部の空気とドレッシング液のあいだに自由界面が存在しますが、酢(主成分:水)と植物油のあいだにも自由界面を見ることができます。このように、空気(気体)と液体のあいだだけでなく、液体同士のあいだにも自由界面は形成されます。
気体と液体が触れ合っている界面は「自由表面」と呼ばれ、液体同士で形成される界面と区別されます。水面は自由表面です。蛇足ですが、気体は混合するため、気体同士の界面はありません。



VOF – Volume of Fluid 解法

VOF法は、数値流体解析において液体(液相)と気体(気相)という相の異なる2つの流体を同時に解析(二相流解析)し、自由界面の位置を特定する計算手法の一つです。自由界面の表現法には、界面を一枚の膜に見立ててその変形を計算する「メンブレン法」や、鉛直方向の水位変化で界面挙動を表わす「高さ関数法」などがありますが、これらの手法では界面の重なりや分離が表現できないのに対し、VOF法では自由界面がもつ「自由」な挙動が表現できるため、自由界面の大変形を伴う二相流解析に用いられています。

インクジェットのCFD解析

インクジェットは、液体の加熱・加圧・流動とその制御に関するMEMS(マイクロ電子機械)システムで、微小液滴の生成・飛翔・着弾が高度に制御されます。家庭用プリンターやオフィス用プリンターの要素技術として開発されたインクジェットは、アパレル染色、電子回路配線プリント、3Dプリンターなどに用途を大きく広げて発展しています。もともとインクジェットは現象観察が難しいうえに、印刷の精細化ニーズでインク粒子径がさらに極小化し、流体解析による実験補完が欠かせません。



多色刷りインクジェット解析

OpenFOAMは、インクジェットのノズル形状設計や加圧制御法の開発に十分な機能を持っています。OpenFOAMでは、VOF法による2相流解析のほかに、互いに混ざり合わない3種類以上の流体 (Immiscible fluids) を同時に扱う VOF 解析が扱え、物性や色の異なるインクを用いた多色刷りインクジェット着弾解析が行えます。



コスト優位性

OpenFOAMはインクジェットの計算にコスト優位性があります。
インクジェットのように極小スケールで高速移動する液体の非定常計算は、計算規模が大きいため、並列計算機を用いるのが通常です。OpenFOAMはフリーソフトで、使用できるコア数にも制限がなく、経済性が極めて高いソフトウェアといえます。

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