竜巻状渦の2次元・3次元シミュレーションの比較

株式会社テラバイト
要点
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竜巻状渦の再現において、2次元解析手法と3次元解析手法を比較評価した。
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単一セル渦については両手法とも良好な再現性を示した。
- 二重セル渦ではコア幅や圧力分布に両手法で大きな差異が確認された。
- 2次元解析手法と3次元解析手法の適用範囲に関する知見を得た。
概要
近年、原子力発電所や重要インフラに対する竜巻リスク評価の重要性が高まっている。本研究では、竜巻状渦(Tornado-Like Vortex:TLV)を対象として、以下の2つの解析手法を比較し、実務適用性を検証した。
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高精度な3次元解析手法(Large Eddy Simulationを使用、以下、3D-LES解析手法)
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計算コストの低い2次元解析手法(Reynolds Averaged Navier-Stokesを使用、以下、2D-RANS解析手法)
計算コストを大幅に削減しながら竜巻流れ場を再現できれば、飛来物解析や構造物への風荷重評価の効率化につながる。そこで、実験施設VorTECHを模擬した解析モデルを利用し、単一セル渦と二重セル渦の両方について評価を行った。
研究背景
竜巻は、以下3つの要因によって構造物へ大きな被害を与える自然災害である。
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強風荷重
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吸引圧(負圧)
- 竜巻によって巻き上げられた物体(竜巻飛来物)による衝突
特に原子力発電所では、竜巻影響評価が安全設計上の重要課題となっている。
しかし、実際の竜巻観測は困難であり、詳細な速度場データの取得は容易ではない。そこで、竜巻研究では、Ward型竜巻シミュレータによるTLVの実験と、それを再現するCFD解析が広く利用されている。
近年は、CFD解析のうちの1つの手法である3D-LES解析手法による高精度評価が利用されているが、大規模計算資源が必要であるため、設計業務への適用には課題がある。
本研究では、その代替手段として提案されている2D-RANS解析手法の有効性を検証した。
研究成果
本研究では、テキサス工科大学の大型竜巻シミュレータ「VorTECH」を模擬した解析モデル(図1)を用いた。竜巻形成部は、以下2つの領域から構成されている。
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Confluence Region(流入領域)
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Convergence Region(収束領域)
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図1 Ward型竜巻シミュレータVorTECHを模擬した解析領域
本研究における2D-RANS解析手法および3D-LES解析手法のメッシュ構成を図2に示す。また、実施した解析ケースを表1に示す。
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図2 2D-RANS解析手法用モデル(軸対称モデル)と3D-LES解析手法用モデルのメッシュ構成
表1 解析ケース
Eは収束領域の半径r0と流入領域の高さhのアスペクト比(h/r0)、Sinはスワール比、Reはレイノルズ数を示す。スワール比0.24は単一セル渦、スワール比0.78は二重セル渦の条件となる。
両解析手法とも、スワール比の変化に伴う単一セル渦から二重セル渦への遷移を再現でき、流入領域における速度分布についても概ね一致することが確認された。これにより、2D-RANS解析手法は竜巻流れ場の基本的な特徴を把握する手法として有効であることが示された。
一方で、二重セル渦条件では収束領域における流れ場に違いが確認された。3D-LES解析手法では図1に示すporous領域から出口へ向かう流れが維持されるのに対し、2D-RANS解析手法では鉛直流速の減衰が生じており、この違いが竜巻コアの形成に影響していることが示された(図3)。
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図3 2D-RANS解析手法と3D-LES解析手法における速度分布の比較(Sin=0.78)
さらに、この流れ場の違いはコア幅や圧力分布にも影響を及ぼした。特に二重セル渦条件では、2D-RANS解析手法と3D-LES解析手法でコア幅(図4)および負圧分布(図5)に明確な差異が確認された。この結果から、2D-RANS解析手法の定常計算の結果が必ずしも3D-LES解析手法の非定常計算の時間平均値を適切に表現しない可能性が示された。これにより、2D-RANS解析手法は竜巻現象の傾向把握やパラメータスタディには有効である一方、飛来物解析や構造物への作用荷重評価など高精度な評価を行う際には、適用範囲を十分に考慮する必要があることが明らかになった。
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図4 コア幅の比較 -
図5 負圧分布の比較
社会的インパクト
本研究は、竜巻状渦の数値シミュレーションにおける2D-RANS解析手法と3D-LES解析手法の特徴を比較し、それぞれの適用範囲に関する知見を示した。特に二重セル渦条件において両手法の差異を明らかにしたことで、今後の竜巻シミュレーションや耐竜巻評価における解析手法選定の参考となることが期待される。
今後の展開
二重セル渦条件で確認された差異の要因として、Vortex Wandering(渦中心移動)や非線形現象の影響が考えられる。今後はこれらの現象を含めた詳細な検討を進め、竜巻シミュレーションの精度向上につなげる予定である。
まとめ
本研究では、竜巻状渦を対象として2D-RANS解析手法と3D-LES解析手法を比較した。
両解析手法いずれも、単一セル渦から二重セル渦への遷移を良好に再現した。一方で、二重セル渦ではコア幅、圧力分布、速度分布に差異が確認された。
これらの結果から、竜巻シミュレーションにおける各解析手法の特徴や適用範囲に関する理解が深まり、目的に応じた解析手法選定の重要性が示された。本研究で得られた知見は、竜巻シミュレーションモデルの発展に寄与するとともに、実務における耐竜巻評価や関連解析への活用が期待される。
論文情報
掲載先:SMiRT27プロシーディングス(2024)
論文タイトル: Comparison Between 2D/3D Simulation of Tornado-Like Vortex Including Numerical Setup
著者:藤原 広太(電力中央研究所)、服部 康男(電力中央研究所)、江口 譲(電力中央研究所)、武久 悟之、人見 大輔
用語説明
竜巻状渦(TLV:Tornado-Like Vortex):
実際の竜巻を模擬するために実験装置や数値解析で生成する人工的な旋回流。
RANS(Reynolds Averaged Navier-Stokes):
乱流の時間平均的な挙動を解析する手法。計算コストが低く、工学設計で広く利用されている。
LES(Large Eddy Simulation):
大規模な乱流渦を直接計算する高精度解析手法。非定常現象の再現に優れるが計算負荷が大きい。
単一セル渦(Single-cell Vortex):
中心部に強い上昇流を持つ比較的単純な竜巻構造。
二重セル渦(Double-cell Vortex):
中心部に下降流、その外側に上昇流を持つ複雑な竜巻構造。強い竜巻でしばしば観測される。
スワール比(Swirl Ratio):
旋回流の強さを示す無次元数。大きいほど竜巻構造は複雑化し、二重セル渦へ遷移しやすくなる。
コア幅(Core Width):
竜巻中心部の代表半径。最大接線方向風速が現れる位置によって定義される。
渦中心移動(Vortex Wandering):
竜巻コアが時間とともに揺らぎながら移動する現象。実験および実際の竜巻で確認されている。
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